大概顔の蒼い人は瘠せてるもんだがこの男は蒼くふくれている。 そんな大病なら、もう少し大人しくすればよかったと思って帰って来た。 一番茶代をやって驚かしてやろう。 向うは二つばかり年上である。 ただ食い物ばかりではない。 甥こそいい面の皮だ。 校長でも尋ねようかと思ったが、草臥れたから、車に乗って宿屋へ連れて行けと車夫に云い付けた。 途中から小倉の制服を着た生徒にたくさん逢ったが、みんなこの門をはいって行く。 目に涙が一杯たまっている。 おれみたような無鉄砲なものをつらまえて、生徒の模範になれの、一校の師表と仰がれなくてはいかんの、学問以外に個人の徳化を及ぼさなくては教育者になれないの、と無暗に法外な注文をする。 校長は薄髯のある、色の黒い、目の大きな狸のような男である。 二 そんなむずかしい役なら雇う前にこれこれだと話すがいい。 甥こそいい面の皮だ。