まるで宮芝居の真似だ。 盆を持って給仕をしながら、やににやにや笑ってる。 清はおれをもって将来立身出世して立派なものになると思い込んでいた。 どうするか見ろと済して顔を洗って、部屋へ帰って待ってると、夕べの下女が膳を持って来た。 名刺を出したら校長室へ通した。 失敬な奴だ。 そんならついでに着物も袴も赤にすればいい。 しかし九円だって、どうかならない事はない。 元は身分のあるものでも教育のない婆さんだから仕方がない。 部屋は熱つかったが、飯は下宿のよりも大分旨かった。 おれは嘘をつくのが嫌いだから、仕方がない、だまされて来たのだとあきらめて、思い切りよく、ここで断わって帰っちまおうと思った。 主人は骨董を売買するいか銀と云う男で、女房は亭主よりも四つばかり年嵩の女だ。 時には鍋焼饂飩さえ買ってくれた。 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。