人参の芽が出揃わぬ処へ藁が一面に敷いてあったから、その上で三人が半日相撲をとりつづけに取ったら、人参がみんな踏みつぶされてしまった。 おれは東京でまだ学問をしなければならない。 それでも清は可愛がる。 親身の甥よりも他人のおれの方が好きなのだろう。 やがて、今のはただ希望である、あなたが希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくってもいいと云いながら笑った。 昨日お着きで、さぞお疲れで、それでもう授業をお始めで、大分ご励精で、――とのべつに弁じたのは愛嬌のあるお爺さんだ。 人間は大概似たもんだ。 浅井は百姓だから、百姓になるとあんな顔になるかと清に聞いてみたら、そうじゃありません、あの人はうらなりの唐茄子ばかり食べるから、蒼くふくれるんですと教えてくれた。 熱いばかりではない。 ただ手車へ乗って、立派な玄関のある家をこしらえるに相違ないと云った。 田舎者の癖に人を見括ったな。 これで大抵は見尽したのだろう。 清は火鉢で乾かして、これでいいでしょうと出した。 　清が物をくれる時には必ずおやじも兄も居ない時に限る。