見ろは烈しいね。 もう、起きてもいいね。 主人はもったい振った口調で、こんな議論を始めた。 これは残念だが仕方がない。 吾輩は死ぬ。 犬に比較された事はこれでもまだありませんよ その方が正しいのさ。 その後今日まで随分ひきましたがあのくらい美しい音が出た事がありません。 まあ羅甸語などはあとにして、ちょっと寒月君のご高話を拝聴仕ろうじゃないか。 生れる時には誰も熟考して生れるものは有りませんが、死ぬ時には誰も苦にすると見えますねと寒月君がよそよそしい格言をのべる。 それから床を出て障子を開けて、椽側へ出て甘干しの柿を一つ食って…… 鈴木の藤さんはどこまでも転がって行く。 賢夫人になればなるほど個性は凄いほど発達する。 東風君も今十年したら、無暗に新体詩を捧げる事の非を悟るだろう。