慰藉されなくても寒月君は無論話をつづけるつもりである。 もうたいていにするがいい。 そこまで持って行くにはだいぶ苦心惨憺たるものがあったのだろう。 それじゃ仕方がないあきらめるかな こんなに自覚心が強くって、どうしておだやかになれるものか。 惜しい事に向うは月中の嫦娥を驚ろかし、君は古沼の怪狸におどろかされたので、際どいところで滑稽と崇高の大差を来たした。 うちへ帰って出直すのは大変だ。 でも結婚が延びて、双方困るだろう そうですか、何ですかあなたは。 今の人はどうしたら己れの利になるか、損になるかと寝ても醒めても考えつづけだから、勢探偵泥棒と同じく自覚心が強くならざるを得ない。 うまかったかいと主人は小供みたような事を聞く。 ――なに仲人は鈴木の藤さんだって？　なるほどそこいらだろうと思った。 ――なに仲人は鈴木の藤さんだって？　なるほどそこいらだろうと思った。 自由を得た結果不自由を感じて困っている。