相変らず春風影裏に電光をきってるね まして夜寒の月影に照らされて、静かに火消壺とならんでいるこの液体の事だから、唇をつけぬ先からすでに寒くて飲みたくもない。 博士ですか、エヘヘヘヘ。 こうなればそれまでだ。 そんな無駄口を叩くとまた負けるぜと主人は迷亭に注意する。 女に逢ってとろけずだろうと迷亭先生が援兵に出る。 先生、子規さんとは御つき合でしたかと正直な東風君は真率な質問をかける。 否楽そのものすらも感じ得ない。 　吾輩は世間が狭いから碁盤と云うものは近来になって始めて拝見したのだが、考えれば考えるほど妙に出来ている。 それから、我に帰ってあたりを見廻わすと、庚申山一面はしんとして、雨垂れほどの音もしない。 そう急いでくるには及ばないさと主人は例のごとく無愛嬌な事を云う。 従卒でもいいから何だ …… なるほど。