…… …… もし気がつくとすれば第一に疑われるものは吾輩であろう。 出来るものなら三毛の代りに……あの教師の所の野良が死ぬと御誂え通りに参ったんでございますがねえ 撓り按排が実に美的である。 辛防が肝心だと思って左右交る交るに動かしたがやはり依然として歯は餅の中にぶら下っている。 見ると今日は前歯が一枚欠けている。 昨日は一刻のひまを偸み、東風子にトチメンボーの御馳走を致さんと存じ候処、生憎材料払底の為め其意を果さず、遺憾千万に存候。 歯が餅の肉に吸収されて、抜けるように痛い。 君にしてこの伎倆あらんとは、全く此度という今度は担がれたよ、降参降参と一人で承知して一人で喋舌る。 ただしその声は旅鴉のごとく皺枯れておったので、せっかくの風采も大に下落したように感ぜられたから、いわゆる源ちゃんなるもののいかなる人なるかを振り向いて見るも面倒になって、懐手のまま御成道へ出た。 首懸の松さと迷亭は領を縮める。 人間の日記の本色はこう云う辺に存するのかも知れない。 　うるさいなと、主人は読みとばす。