今途中で御馳走を誂らえて来ましたから、そいつを一つここでいただきますよととうてい素人には出来そうもない事を述べる。 それで盗難に罹ったのは何時頃ですかと巡査は無理な事を聞く。 　陰士は小脇になにか抱えている。 庸人と相互する以上は下って庸猫と化せざるべからず。 その内を毎月五円宛会社の方で預って積んでおいて、いざと云う時にやります。 せっかく好い心持に寝ようとしたところをと欠伸交りに仏頂面をする。 やっとの思いでこのいびつを取るとまた直径に狂いが出来ます。 ねえ、寒月君、それだから、失恋でも、こんなに陽気で元気がいいんだよと主人が寒月君に向って迷亭君の失恋を評すると、寒月君はしかしその娘が丸薬缶でなくってめでたく東京へでも連れて御帰りになったら、先生はなお元気かも知れませんよ、とにかくせっかくの娘が禿であったのは千秋の恨事ですねえ。 ところが翌朝は丸薬缶さ人を馬鹿にしていらあと主人は例によって天井の方へ視線をそらす。 姉のとん子は、姉の権利はこんなものだと云わぬばかりにうんと右の手を延ばして妹の耳の上へのせている。 　主人は無言のままようやく一頁をはぐっていよいよ巻頭第一章を読み出す。 痛む事おびただしい。 長かって、どげんですか いいえ、あの人にゃ、まだそんな事は云い切りません。