先刻から袷一枚であまり寒いので少し運動でもしたら暖かになるだろうと云う考から主人はこの先例のない動議を呈出したのである。 陰士は勝手から茶の間の方面へ向けて出現するのであろうか、または左へ折れ玄関を通過して書斎へと抜けるであろうか。 もし神ありて汝は働くために生れたり寝るために生れたるに非ずと云わば吾輩はこれに答えて云わん、吾輩は仰せのごとく働くために生れたり故に働くために休養を乞うと。 向うは大頭ですから そこで老梅君食ったそうだ。 霊か相思の煙のたなびき 先生も法科でもやって会社か銀行へでも出なされば、今頃は月に三四百円の収入はありますのに、惜しい事でござんしたな。 　　　富子嬢に捧ぐ 坊主とか自称するものはいつ見ても頭を青くしている。 …… しばらくすると風呂場でうがい茶碗が金盥にかちりと当る。 主人は事もなげに君に捧げてやろうかと聴くと迷亭は真平だと答えたぎり、先刻細君に見せびらかした鋏をちょきちょき云わして爪をとっている。 意味も何にもあるもんか 女房なんどは、どんな汚ない風をしていても、自分さい宜けりゃ、構わないんでしょう