金なんか儲けるのは、ほんに造作もない事でござります これに続く黒い影は後ろに廻るかと思う間もなく吾輩の尻尾へぶら下がる。 そうせんと、あぶないです あまり女が好く体裁ではない。 何でも、こう、一としゃくいに引っ掛けてねと云いつつ箸を上げると、長い奴が勢揃いをして一尺ばかり空中に釣るし上げられる。 　吾輩は何の必要があってこんな議論をしたか忘れてしまった。 随分軽蔑なさるのねと細君は中途から不意に迷亭に切り付ける。 東風君はこれだけではまだ弁じ足りない。 どうだろう苦沙弥君、論文脱稿前にその問題だけでも金田家へ報知しておいては主人は迷亭の云う事には取り合わないで君そんな事が骨の折れる研究かねと寒月君に聞く。 　吾輩は叙述の順序として、不時の珍客なる泥棒陰士その人をこの際諸君に御紹介するの栄誉を有する訳であるが、その前ちょっと卑見を開陳してご高慮を煩わしたい事がある。 主人はうーん、むにゃむにゃと云いながら例の赤本を突き飛ばして、黒い腕を皮癬病みのようにぼりぼり掻く。 座敷なら欄間と云うような所が幅一尺ほど切り抜かれて夏冬吹き通しに引窓の代理を勤めている。 先生学校を卒業して何年になんなさるか たまの日曜だもの、あなた