昨日までは綿入を二枚重ねていたのに今日は袷に半袖のシャツだけで、朝から運動もせず枯坐したぎりであるから、不充分な血液はことごとく胃のために働いて手足の方へは少しも巡回して来ない。 盗られたあとなんだからと平気な事を云って帰って行く。 やっぱり奥さんのようにあなたは重いじゃありませんかとか何とか云われて見たいね。 ちょっと聞くと夢のようだが、夢にしても現実よりたしかな夢だ。 　小供の方はと見るとこれも親に劣らぬ体たらくで寝そべっている。 吾輩の爪は一縷のかかりを失う。 女より軽いものは無である。 戦闘線は勿論あまり広かろうはずがない。 ――ええと、その訳はこうである。 すべてが深夜にただならぬ物音を立てて死物狂いの吾輩の魂をさえ寒からしめた。 知りませんわ、知りませんが十二円五十銭なんて法外ですもの やっとの思いでこのいびつを取るとまた直径に狂いが出来ます。 いくら心配したって法が付かんからである。 しかし三口となるといかに本能的に鼠を捕るべく予期せらるる吾輩も手の付けようがない。