俺はもう盗難告訴を書いてやらんから 陰士はしばらく椽側に立ったまま室内の動静をうかがっていたが、主人夫婦の熟睡しているのを見済してまた片足を畳の上に入れる。 ぬす盗が？　馬鹿な奴ですなあ。 さあずっと、こっちへ通りたまえと迷亭先生は自分の家らしい挨拶をする。 こう眠くては恋も出来ぬ。 姉のとん子は、姉の権利はこんなものだと云わぬばかりにうんと右の手を延ばして妹の耳の上へのせている。 鳳眠を驚かし奉ってはなはだ相済まん。 それだからあなたは不人情だと云うんです。 大和魂は名前の示すごとく魂である。 蕎麦はツユと山葵で食うもんだあね。 あの図書館へ小便をしに来た老梅君などになるとすこぶる奇だからねどんな事をしたんだいと主人が調子づいて承わる。 嘘だと思うなら試しにやって見るがよろしい。 一匹もとった事はありません。 かくまで鄭重に肌身に近く置いてある以上は大切な品物であろうと鑑定するのも無理はない。