もし全然無能でなくとも人間以上の能力は決してない者であると断定が出来るだろうと思う。 さあ坐りたまえとどっちが客だか分らぬ挨拶をする。 一行も読まぬくらいならわざわざ提げてくる必要もなさそうなものだが、そこが主人の主人たるところでいくら細君が笑っても、止せと云っても、決して承知しない。 不思議な事にはその鍋の蓋を見ると大小十個ばかりの穴があいている。 　今度はへっついの影で吾輩の鮑貝がことりと鳴る。 そんなつまらない物をやって見給え。 どうです、喰べて見なすったか、折れんように箱を誂らえて堅くつめて来たから、長いままでありましたろう 気味の悪るいと細君しきりに怖がっている。 陰士は今や勝手の上に大いなる泥足を上げて二足ばかり進んだ模様である。 もっとも胃弱にこの暑さは答えるからね。 それを思うと人間は贅沢なものだ。 私が貰って行って煮て食おうか知らん うちのものだもの ここにおいてか鼠の出口を研究する必要が生ずる。