いささか手持無沙汰の体である。 どうも驚ろいたね。 あれは嫌だ、これは嫌だと云うのは贅沢な我儘で到底教師の家にいる猫などの口にすべきところでない。 何ですか、その西洋料理へ行って午飯を食うのについて趣向があるというのですかと主人は茶を続ぎ足して客の前へ押しやる。 この男がどういう訳か、よく主人の所へ遊びに来る。 　　君を待つ間の姫小松…………… 最後にからだ全体の重量を椀の底へ落すようにして、あぐりと餅の角を一寸ばかり食い込んだ。 ハハハハこれは面白い。 　何が御諒察だ、馬鹿なと主人はすこぶる冷淡である。 堀川は三味線もので賑やかなばかりで実がないからよそうと云うと、細君は不平な顔をして引き下がった。 何だか猫でないような感じがする。 からだを拗じ向けたり、手を延ばして年寄が三世相を見るようにしたり、または窓の方へむいて鼻の先まで持って来たりして見ている。 　寒月は例のごとく欠けた歯を出して笑いながらそれは残念でしたなと云う。 ヴァイオリンも三挺くらいになると下手でも聞かれるものですね。