主人に劣らぬほどの無性猫となった。 迷亭君は気にも留めない様子でどうせ僕などは行徳の俎と云う格だからなあと笑う。 障子の中で例の御師匠さんと下女が話しをしているのを手水鉢の葉蘭の影に隠れて聞いているとこうであった。 自分の妻を褒めるのはおかしいようであるが、僕はこの時ほど細君を美しいと思った事はなかった。 ひっそりして人の気合もしないから、泥足のまま椽側へ上って座蒲団の真中へ寝転ろんで見るといい心持ちだ。 いくら人間が発達したってこればかりは駄目である。 それもまず善いとして薄ぎたない猫とは随分酷評をやるものだとなお耳を立ててあとを聞く。 主人は何にも云わず立って書斎へ這入る。 例の御櫃の上から拝見していると、主人はだまって雑煮を食っている。 飛び込んだ後は気が遠くなって、しばらくは夢中でした。 これもちょうど明ければ昨年の暮の事でしかも先生と同日同刻くらいに起った出来事ですからなおさら不思議に思われます すると一日動かずにおったものだから、胃の具合が妙で苦しい。 …… 早くやめてくれないと膝が揺れて険呑でたまらない。