万一の事を考えると今の内に有為転変の理、生者必滅の道を説き聞かして、もしもの変が起った時取り乱さないくらいの覚悟をさせるのも、夫の妻に対する義務ではあるまいかと考え出した。 三毛のような器量よしは早死をするし。 ケートは窓から外面を眺める。 いやそれだけは当人の迷惑になるかも知れませんから廃しましょう そのうちとうとう晩飯になったから、母へ返事でも書こうと思ってちょいと十二三行かいた。 取ってやらんと死んでしまう、早くとってやれと主人は再び下女を顧みる。 いかに迂遠な主人でもこう明らさまに書いてあれば分るものと見えてようやく気が付いたようにフンと言いながら吾輩の顔を見た。 いわんや実際をいうと彼等が自ら信じているごとくえらくも何ともないのだからなおさらむずかしい。 ええと答えて東風子は主人の顔色を窺う。 よく人が首を縊ると云うがこんな時にふと誘われて死ぬ気になるのじゃないかと思い出す。 　何だか妙だなと首を捻る。 かくの如くすれば好物は貪ぼり次第貪り候も毫も内臓の諸機関に障害を生ぜず、一挙両得とは此等の事を可申かと愚考致候…… 主人はそれにも頓着なく笑う。 しばらく御無沙汰をしました。