早く医者に見てもらって服薬でもしたら四時前には全快するだろうと、それから細君と相談をして甘木医学士を迎いにやると生憎昨夜が当番でまだ大学から帰らない。 いえそれはほんの冒頭なので、本論はこれからなのですふーんと主人は好奇的な感投詞を挟む。 それで面白い趣向があるから是非いっしょに来いとおっしゃるのでと客は落ちついて云う。 しばらく話しが途切れて吾輩の咽喉を鳴らす音が主客の耳に入る。 全体どこにあったのかと問う。 やがて眼がさめて見ると寒くはあるが、どこも濡れた所も何もない、水を飲んだような感じもしない。 私は覚えずはーいと返事をしたのです。 胃内廓清の功を奏したる後又食卓に就き、飽く迄珍味を風好し、風好し了れば又湯に入りて之を吐出致候。 否椀底の様子を熟視すればするほど気味が悪くなって、食うのが厭になったのである。 医者を呼んで見てもらうと、何だか病名はわからんが、何しろ熱が劇しいので脳を犯しているから、もし睡眠剤が思うように功を奏しないと危険であると云う診断だそうで私はそれを聞くや否や一種いやな感じが起ったのです。 どうも私を呼ぶ声が浪の下から無理に洩れて来るように思われましてね。 なぜ四時までに行かなくては駄目なんだと聞き返すと、そのくらい早く行って場所をとらなくちゃ這入れないからですと鈴木の君代さんから教えられた通りを述べる。 なぜ四時までに行かなくては駄目なんだと聞き返すと、そのくらい早く行って場所をとらなくちゃ這入れないからですと鈴木の君代さんから教えられた通りを述べる。 御前がそんなに行きたいなら行っても宜ろしい、しかし一世一代と云うので大変な大入だから到底突懸けに行ったって這入れる気遣いはない。