どうしたって利かないものは利かないのだ。 でもあなた澱粉質のものには大変功能があるそうですから、召し上ったらいいでしょうと飲ませたがる。 ところがやはり気に入った名がない。 近松といえば戯曲家の近松に極っている。 明日は某男爵の歌留多会、明後日は審美学協会の新年宴会、其明日は鳥部教授歓迎会、其又明日は…… いつになく富士見町の方へは足が向かないで土手三番町の方へ我れ知らず出てしまった。 今までは黒との応対で気がつかなかったが、見ると彼の足の下には一切れ二銭三厘に相当する鮭の骨が泥だらけになって転がっている。 　東風子が帰ってから、主人が書斎に入って机の上を見ると、いつの間にか迷亭先生の手紙が来ている。 …… どっちにしたって明治の歴史に関係するほどな人物でもないのだから構わない。 新年匆々こんな悪戯をやる迷亭はよっぽどひま人だなあと主人は笑いながら云った。 再び三度。 帰り道にもその事ばかりが頭の中にあって苦しくてたまらない。 うちで主人の苦い顔を見たり、御三の険突を食って気分が勝れん時は必ずこの異性の朋友の許を訪問していろいろな話をする。