ここにおいてか主人は今まで頭から被っていた夜着を一度に跳ねのけた。 姉は丹念に一粒ずつ取っては食い、取っては食い、とうとう妹の顔中にある奴を一つ残らず食ってしまった。 奇体な物だなあと大分感心した様子であった。 いえ、それでは……どうぞあれへと主人はいい加減に先方の口上を真似ている。 ただ怒るばかりじゃないのよ。 それだから困る。 長いじゃありませんか。 そのほか苦手はいろいろある。 分らん事を言う奴だな。 昔し僕のところへ泊りがけに来て例の通り消極的の修養と云う議論をしてね。 しかし中途で口を出されたものだから、続きを忘れてしまって、あとが出て来ない。 うちだって貯蓄はなし、こうして小供は三人もあるし、せめて保険へでも這入ってくれるとよっぽど心丈夫なんですけれども、そんな事は少しも構わないんですもの 一体叔父さんはどこを散歩したの われ切られじと思うところに心を置けば、切られじと思うところに心を取らるるなり。