知っても尊敬畏服の念は毫も起らんのである。 今度は主人にも納得が出来たらしいのでようやく安心したが、こんなところにまごまごしているとまた吶喊を喰う危険があるから、早く話しの歩を進めて、一刻も早く使命を完うする方が万全の策と心付いた。 結構だ。 君は赤ん坊に大根卸しを甞めさしたそうだなふむと主人は笑ったが赤ん坊でも近頃の赤ん坊はなかなか利口だぜ。 いろいろ調べて見ましたが鼻の起源はどうも確と分りません。 嫁に来てから滋養分でも食わしたら、少しは延びる見込みがあると思ったんだと真面目な顔をして妙な理窟を述べていると門口のベルが勢よく鳴り立てて頼むと云う大きな声がする。 寒月でも、水月でも知らないんだよ――大嫌いだわ、糸瓜が戸迷いをしたような顔をして第三の剣突は、憐れなる寒月君が、留守中に頂戴する。 鈴木君はちょっとこれを裏返した上で、それへ坐る。 自分の面あ今戸焼の狸見たような癖に――あれで一人前だと思っているんだからやれ切れないじゃないか顔ばかりじゃない、手拭を提げて湯に行くところからして、いやに高慢ちきじゃないか。 大変怒ってるね。 至極穏かで危険のない顔には相違ないが、何となく変化に乏しい。 寒月か 失敬な、――甘木さんへ行って聞いて見ろ――元来御前がこんな皺苦茶な黒木綿の羽織や、つぎだらけの着物を着せておくから、あんな女に馬鹿にされるんだ。 真面目に猫を相手にして曲直を争うのはいかにも大人気ない。